2019年3月22日金曜日

AIと異分野の交流

3月21日、全脳アーキテクチャ若手の会の「第3回異分野交流会 -学問の垣根を越えて知能とAIを考える-」に参加した。

AI / 機械学習は基盤技術であって、さまざまな分野で応用できる。その意味で異分野との接点が出てくる。

しかし、この日の異分野交流はまた別の意味があった。それはAI自体、AI基盤の今後の発展を考える上で異分野の知見が欠かせないということであろう。登壇者は、認知科学、心理学、神経医学/精神医学、生物学、科学哲学、管理会計学など多彩な分野から、AIや知能の問題との関連を語っていただいた。単一の分野の視点というのではなく、複数の分野にわたった知見から考察している人もいて、大いに刺激になった。

最初の若手の会会長の八木拓真氏は、人工知能研究の立場からの話で、この中ではむしろ異質といえる。しかし人工知能の今後に関しては、人工知能研究を一段上から俯瞰してみた上での考察で、今まで気が付いていなかった考えになるほどと思った。

それは、人工知能の実装には「帰納バイアス」があるということだ。これは、「暗黙的に用いている仮説の集合」で、簡単な例では、線形回帰が使えるものか別の関係が必要なのかとか、想定されるデータの範囲があることなどがある。また、サンプルしているデータの属性も限定される。そのために、「実世界をどう切り取るか」が重要なポイントとなる。そして今後は、ドメイン知識を帰納バイアスにうまく使うことが求められるという。つまり、今はそのまま生データをつっこんで学習させているが、データの中の制約、データ間の制約を生かすことでより良い学習が可能になるということであろう。自然言語処理においては、これまで培ってきた構文ルール、意味関係の制約、文脈、談話構造などの研究成果を、単語ベクトルの羅列とどう組み合わせていくかが次の段階になるのあろうと思う。

今回いちばん会場がわいたのが、大阪大学 高橋英之氏による招待講演 "「ちのう」と「あい」の構成論を目指して"。効率を目的とするのではなく、人の幸せを目的としたAIを目指すということだ。しかしそこにはジレンマがあって、人間を幸せにするような制御しようとしても、それに気づいてしまうと幸せを失われる。人をサポートするロボットも、どうしても開発者が良かれと思って埋め込んだ機能が「あざとさ」として表出される。ペッパーの写真がちらっと出たのだけれど、この会場がYahoo! LODGEだったので「これまずかったですね」で会場爆笑。彼が理想とするのは、「フランダースの犬」パトラッシュ。ネロのそばにいるだけで何も役に立つことをするわけではないが、ネロにとっては心の支えになっている。そのほか、「人間に対して何もしない」ロシアの神様、「レンタル何もしない人」の例が出された。

触感がこの感覚を伝えるのに効果的だというが、触感は一つの物質でひとつの触感に固定されるため、その代わりに「空気」を使う。具体的にはプロジェクションで部屋の雰囲気を変えるという。

このあと9人の登壇者が、自分の専門からAIや知能について語るのだが、それぞれ持ち時間が15分しかないため、濃密な話になった。聴く方としては消化不良になる感じもあったが、この濃密感が知識のシャワーみたいで良かったのではないかと思う。これは3月11日に行われた日本学術会議の公開シンポジウム 「That's Interesting:ICT研究はどこに向かうのか」で狙いとしていたものに近いのではないか。

特に、どこかの研究所の匿名研究員きなこさんと、上智大学 上田桃子さんによる哲学の話が、自分の分野と離れていて興味深かった。逆に自然言語処理の分野の京都大学 清丸 寛一氏の話は「ことばの意味を探して -AIにビールを教えたい-」は、私の現在の関心である「自然言語処理において理解とは何か」にずばり切り込んだお話で、共感を持って聞けた。

最後に「若手の会」の会なのにオヤジが参加して申し訳ありません。でもまた参加したいと思います。

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