2019年8月5日月曜日

選ばれる機能、それがマーケティング (Bigbeat LIVE その1)

表題の「選ばれる機能、それがマーケティング」は、8月2日に行われたBigbeat LIVE の挨拶に立った濱田社長の言葉から。最初に「BtoBマーケター夏の祭典」というサブタイトルがついていたので、デジタルマーケティングとかリードナーチャリングとかの話かと思っていたが、この言葉でそうではないことがわかる。

「マーケティング」は人によって使われる意味が変わってくる。「狭義のマーケティング」は、広告、プロモーションで、「作ったものをどう売るか」。これに対して「広義のマーケティング」には「売れる仕組みを作る」、そして、「売れるものを作る」まで含まれる。Bigbeatは広告会社ということで、そういう意味では狭義のマーケティングが専門だと思うが、このイベントはそうではないことがわかる。

実際、一日イベントに参加して大いに刺激になったし、勉強になった。あ、「勉強になった」は敗北の言葉だった (小島英揮さん談)。行動が大事。そしてアウトプットが大事。それぞれの登壇者の言葉を拾っていきながら、考えたこと、これまで考えてきたこととの接点をまとめていこうと思う。

濱口社長:「働き方改革」に関しては、(電通の問題があった) 2018年以前から気付いている人が多くいた。「働き方」を変えるには「経営」を変える、「マーケティング」で「経営」を変える。
 -- 働き方改革のためには、長時間労働でなく、生産性をあげなければいけない。日本の会社をみていると、部門でできるコスト削減の取り組みは力を入れているが、コスト削減の積み重ねでは不十分で、会社全体でコストをかけず売り上げを伸ばす必要が出てくる。それは「選ばれる機能」を作ることで、 (広報宣伝部だけの仕事でなく全社で取り組む) 広義の「マーケティング」だ。それをドライブするのは「経営」だ。

濱口社長:「デジタル」と「物語」が重要。
 -- 「物語」は「選ぶ理由」であろう。そしてそこには「共感」が必要になる。製品を買うことでその物語の一部になる。その物語の一員である自分を買っているといっていい、私もこれまで "私達が買うのはそのモノではなく、それを使っている「自分自身」" (「モノを売るのではなく新しい価値を売る」) とか、"クラウドファンディングで購入を決めた人、初期ロットで完成度70%段階で買った人は「わしがオールユアーズ を育てた」と思っているだろう" (「CXの時間軸 (CX DIVE 2019 その1)」) というようなことを書いてきた。

最初のセッション1st Stage のテーマは "真に「顧客の未来」を描く"。顧客の今に価値を提供するだけでなく、顧客の成長に貢献することが重要だというメッセージが見える。このセッションのモデレータはパラレルマーケター小島英揮氏。

小島英揮氏 "Sell To the Community" ではなく "Sell Through the Community"。コミュニティには3つのレイヤーがある。上から、リーダー、フォロワー、ワナビーズ。上位2レイヤーに力を入れる必要がある。コミュニティには3つのファーストが必要だ。1.コンテキスト、2.オフライン、3.アウトプット。
 -- 以前 (2005年) 書いた「インターネットマーケティング」では、フォロワーを多く持つブロガーにレビューしてもらって ... という程度だった。ブロガーとフォロワーの組み合わせはコミュニティといえるかもしれないが、このでのフォロワーは小島氏が定義するレイヤーでは基本的には特に何も貢献しないワナビーといえるだろう。商品の口コミはそこで終わり、"Sell To the Community" に留まっているといえるだろう。

松村大貴氏 (株式会社空)「飽和の時代のマーケティング」(事前インタビュー):
飽和の時代のマーケティングシフトは、拡大よりも価値発見、マスよりもパーソナル、モノよりもストーリー、WhatよりもWhy というシフトである。空は、ダイナミックプライシングサービス Magic Price を提供している。マーケティング 4P のうち Pricing が未開拓だが、Pricing の改善が利益に最も効いてくる。これが空のWhy。
 -- 松村氏の「Why」は、濱口社長の「物語」に繋がっているのではないか (Tweet)。どちらも「選ぶ理由」。

松村氏:Outside-In から Inside-Out への転換。ビジョンは調査では得られない。妄想からスタートするものでないと新しいものは生まれない。
 -- Outside-In はマーケットイン、Inside-Outはプロダクトアウト。以前はプロダクトアウトはダメでちゃんと市場の要求に応えるマーケットインが必要だといわれていたが、その限界が見えてきた。全く新しいマーケットを作るにはプロダクトアウトが必要だ。しかしこれに関することは昔から言われていて、ヘンリー・フォードの格言で「もし私が顧客に彼らの望むものを聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう」というのがあった (「みんなソニーが大好き」)。

牟田口武志氏 (イケウチオーガニック):もとは海外ブランド (B2B) 中心で、自社ブランド (B2C) は1% しかなかった。2003年、問屋の倒産で大きな負債を負い民事再生法で再建することになった。1%の自社ブランドで再生を目指すというのはあり得ない選択だが、お客様の声が後押しになった。
 -- チャレンジだが、下請けを続けるより発展はあるだろう。必要なのは勇気だが、お客様の声が後押ししたといえるだろう。

牟田口氏:これにより、B2CがB2Bを超えた。ここで、B2B事業の再定義。共感してくれる企業を増やす。その人たちを紹介する場としてオウンドメディア「イケウチな人たち」を作った。ライター、カメラマン、編集部もイケウチファンで固めた。レストランSioオーナーがイケウチオーガニックに心酔し、おしぼりに採用、インタビューにも応じてくれた。インタビュー記事を読んで採用レストラン数10倍。
 -- 「コミュニティを通じたマーケティング」というとB2Cを想定するが、そのCから逆にBに影響を与えてB2Bになっている。

松尾佳亮氏 (Sansan):それまでデジタル領域での広告だけだったが、頭打ちになり、2013年からTV CMを始めた。2016年からコミュニティマーケティングを導入している。Sansanをそのプラットフォームとして活用している。
 -- サービス自体が人と人とをつなぐもので、コミュニティを形成している。このコミュニティを活用できる点は、このようなサービス特有なものだろう。以前 "顧客が作る「サービスの魅力」" ということを考えていたのを思い出した。

「広義のマーケティング」の話に戻るが、パネルディスカッションの中で「マーケティングはオーケストレーション。社員が納得していないとお客様に伝わらない」という言葉は響いた。自分に嘘をつきながら「魅力」を伝えても、聴く人からは気づかれてしまうよね。そしてこのことが、午後の2nd Stage のテーマ "組織は「共感」で変わる" につながる。それはまた別記事「その2」で。

パネルディスカッション

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