2019年4月13日土曜日

トレジャーハンティングといけにえアイデア

4月11日、RCA と IIS Design Lab の Inspire Talks を聴きに行った。2月のテーマは「バイオ」だったが、今回のテーマは「マテリアル」。

最初のトークは東京大学 大学院情報理工学系研究科 川原研究室 鳴海 紘也氏の「マテリアル志向インタフェース」。素材からどう使うかを考える。

一つは紙で作るロボット "Liquid Pouch Motor"。パウチの中に34度で沸騰する液体がいれてあり、紙に印刷した回路で温めることによりパウチを膨張させて、蝶の羽を動かす。これをドーム全体に張り付けたものがPapillion。Paperと Papillon (パピョン = 蝶) と Pavilion (パビリオン) を合成した名前だね。この蝶ひとつひとつが自動開閉の窓になっていて、寒いときには窓が閉じ、暖かくなると窓があき、換気がなされる。

A LIVE UN LIVE
森美術館で行われている「六本木クロッシング2019展」に出展されている "A LIVE UN LIVE" もこれでできている。光の当たりかたにより色が変わるドレス。光の当て方を変えていると思っていたのだが、ドレスの蝶が羽を広げたり閉じたりすることで、光を受ける方が方向を変えていたのだ。そういうところは注意してみていなかったので、もう1回行ってちゃんと見てこようと思う。

もう一つは、自己修復素材PBSを用いたもの。これに関してはまだ発表前だということで、これ以上の説明はここでは控える。会場からの質問で、自己修復素材にはハイドロゲルというものもあるそうだが、これは乾燥するとその機能を失うのに対して、PBSは長い間使え、何回切っても修復するとのこと。

東京大学生産技術研究所 岡部 徹教授のお話のテーマは「チタン」。研究テーマはチタンの新しい精錬方法などだが、チタンを用いた椅子などのデザインを行っていて、昨年国立新美術館で行われた「もしかする未来」展にも出展したとのこと (これは行きたかったな)。デザインは山中俊二氏との共同作品。

デザインの話よりも岡部氏の「チタン愛」が興味深かった。チタンはレアメタルといっても、9番目に多い金属だそうだ。 今は精錬が難しいためレアメタルになっているが、精錬技術が進んでくるとそのうちコモンマテリアルになるだろうという。今は航空機、ロケットなど金に糸目をつけない分野でよく使われているが、今後安価になったらどういう使い方がされているだろうか。

最後のお話は、東京大学生産技術研究所ノルウェン・モデ氏の「Science * Design」。これは特定のマテリアルの話ではなく、研究所全体のお話で、「 どのように科学とデザインがコラボしていくか」というメタ視点にたった研究に関してであった。この研究は、
  • デザイナーと科学者の違いを発見整理し、
  • コラボのアウトプットがどのようなものかを調査し、
  • コラボレーションの方法を検討する
ものである。特に、コラボレーションの方法では次の2つの手法を考案した。
  • トレジャーハンティング:デザイナーが各研究室をめぐり、コラボレーションの種を特定していく。18人のデザイナーと10の研究室が参加し、109のアイデアが生まれた。
  • いけにえアイデア: 取るに足らないアイデアを批評してもらうことで、制約や新たな可能性を探る。
今後の課題は、この方法をブラッシュアップさせるとともに、普及を図ることだということだ。

よくコラボレーションでイノベーションが生まれるという。だが、ただ同じところにいるだけでは、交流は生まれても、イノベーションが生まれるまでには至らない。ここで提案されているような進め方は深い考察を必要とするもので、イノベーションにつながる確率は高そうに思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿

膠着語について