でも、「コンサマトリー」って何?
はてなキーワードに簡潔な定義が書いてあった。
はてなキーワード
「コンサマトリー」
自己目的、自己完結。それ自体を目的とすること。対義語はインスツルメンタル。
ふむふむ。しかしCXで「自己目的」って何?と新たな疑問が浮かぶ。CX 自体は、顧客が目的を達成するための手段を、いかに快適に、満足してもらう形で提供することではないか。
CX DIVE サイト の説明をまるごと引用する。
「コンサマトリー」という概念がある。
行為に目的や手段としての価値を見出すのではなく、 行為それ自体を楽しむ、という発想だ。
社会学者の見田宗介は、「私のこころは虹を見ると躍る」という言葉で コンサマトリーのあり方を説明し、最新刊『現代社会はどこに向かうか』の 中では私たちがこの先向かうべき道筋の基準の一つとして提示した。
”活動それ自体を楽しみ、心を躍らせる。同時に、他の人の楽しさをも尊重し、 自分も他者もともに心躍らせている。”
これまでの に登壇いただいた方々のあり方は、まさにコンサマトリーであった。興奮をともなう語り。白熱するディスカッション。会場を覆う熱気。
コンサマトリーの追求が新しい体験やつながりを生み出し、他者へと伝播する。その連鎖が世界を変える大きな原動力になる。
一流のプロフェッショナルたちのコンサマトリーに、一緒にしましょう。
すなわち、このイベントに参加する、そのこと自身を楽しみましょうということだ。
しかし、このイベントを通じて感じたことは、登壇者の皆さんが、「このイベントを楽しむ」というより「普段の仕事を楽しんで行う」という解釈をされていて、実際にそのように仕事を楽しんでいることがわかった。
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左 青木耕平氏 / 右 朝霧重治氏 |
自分が楽しむことの重要性は、キーノートセッションでクラシコムの青木耕平氏が、事業においての優先順位で語っているのがわかりやすい。
1. 現場のキャッキャ
2. 顧客のキャッキャ
3. 最後に収支
まずは「現場のキャッキャ」で、これが「コンサマトリー」と言えるだろう。それは、現場の熱量。盛り上がっているか。自分が熱を持って携われないような製品は顧客の心に届かない。それが顧客まで届いても、それが顧客の期待以上で、顧客がよろこぶ状態になる必要がある。それが「顧客のキャッキャ」。そういう状態になれば収支は自ずとついてきそうだが、しっかりおさえておかないと事業として継続できない。
青木氏のクラシコムは、北欧雑貨店から、広告事業、オウンドメディアまで事業を広げ、今はオリジナルドラマを配信している。さらにはドラマの挿入歌から音楽にも進出している。音楽ビジネスも一通り経験したいと語る。面白かったのはプレイリストの話で、選曲センスのいいプレイリストにはファンがつき、サブスクリプションという形になるとのことだ。
キーノートセッションのもう一人の登壇者は川越のコエドブルワリーの朝霧重治氏。職人が作るビール「クラフトビール」を前面に出している。もともと「地ビール」と言われてぶーむがあったお土産的な扱いであった。存在意義を再定義したいということで、「地ビール」ではなく「クラフトビール」を前面に出し、ブランドコンセプト "Beer Beautiful" を掲げている。企画を考えるときに、"Beer Beautiful" につながるか、自分たちが楽しめるかで考えているという。
その他のセッションでも「コンサマトリー」との関連が意識された進行であった。そのうちそれぞれで感じたところを挙げていく。
「コンサマトリーの核⼼は"⾏動を伴う熱量"の波及にある」のセッションの中で、個人のコンサマと集団のコンサマの対比があった。個人のコンサマでは、未来志向のインスツルメンタルとの対比がある。未来志向は大事だが燃え尽きの危険がある。バランス、融合が大事になる。融合という意味では、将来を目指して努力しているのがコンサマ状態となる場合がある。この時、時間を忘れる、時間感覚がなくなる。
集団のコンサマは引き込み現象。明確なビジョンをもち、熱量をもって伝える。これには、脳内報酬が必要になる。リスクがあるほうが報酬は高い。「新しい」も報酬が高い。しかし毎年あるお祭りも脳内報酬が高い。 すなわち、日常の業務の繰り返しではコンサマは起きないということではないか。
「社会の当たり前をアップデートするCX」では、社会貢献に寄与する事業の場合が語られた。コンサマトリーという点では「プロセスをいかに楽しめるか。社会課題解決は楽しむ雰囲気が忌避される傾向」ということがお題に上がった。ここでは、相手/顧客が喜ぶ姿が喜び、一つの目標の達成が次の目標につながるなど優等生的な回答であった。やはり社会貢献を楽しんでやっているのは不謹慎とかお叱りが来る可能性があり、素直に楽しいと言えないのかもしれない。
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左から モリジュンヤ氏、小池義則氏、 飯田陽狩氏、河尻和佳子氏 |
流山市 マーケティング課 課長 河尻和佳子氏の「受身の人を少なくしていきたい。しょうがないでなく一歩でも半歩でも踏み出していく人が増えると社会が変わる」という言葉に共感を感じた。
「独自の世界観で、つながりを生み出す」のモデレーターは株式会社東京ピストルの草彅洋平氏。春のCX DIVEの「五感を刺激する演出から学ぶ」(「紀里谷さん大暴れ (CX DIVE 2019 その3)」) の続編のような感じで、お題が出されず、カオスのような進行であった。「コンサマトリー」についてそれぞれ話すという構成にはならなかったが、登壇者の皆さんがそれぞれコンサマトリーを日々実感しているのだろうということは伝わってきた。